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高電圧リチウムイオンバッテリー ―空冷・水冷の違いと選定ガイド

リチウムイオンバッテリーや電動化ユニットの性能は、セル自体の化学特性だけでなく、「冷却設計」に大きく左右されます。 特に高出力・高電圧化が進む産業用システムでは、空冷と水冷のどちらを採用するかが、寿命・安全性・設計コストを決定づける重要なポイントになります。 本稿では、それぞれの特徴と、選定時に考慮すべき実務的な観点を整理します。

冷却の目的

リチウムイオンバッテリーでは、充放電時に発生する熱を効率よく逃がすことが求められます。 温度上昇を放置すると、セルの劣化や容量低下、最悪の場合は熱暴走につながる可能性があります。 適切な冷却は、性能安定・寿命延長・安全性確保の三点を同時に支える重要な要素です。

空冷方式の特徴

空冷は、ファンやダクトを用いて空気を循環させ、バッテリーモジュールの表面から熱を放散する方法です。

メリット

  • 構造がシンプルで軽量、保守が容易
  • 配管や冷却液が不要なため、コストを抑えられる
  • 比較的コンパクトな筐体設計が可能

デメリット

  • 冷却能力は空気温度と流量に依存
  • 周囲温度が高いと冷却効果が低下
  • 高出力・高密度構成には限界がある

空冷は、 中出力クラスや軽量化重視のシステム に適しています。 代表的な用途は、AGV、フォークリフト、サービスロボットなどです。

水冷方式の特徴

水冷は、冷却プレートやパイプに冷却液を循環させて熱を移動させる方式です。 冷却効率が高く、高負荷連続運転や高温環境下でも安定した温度制御が可能です。

メリット

  • 高出力密度構成に対応可能
  • 温度分布が均一になりやすく、寿命安定性が高い
  • 周囲温度の影響を受けにくい

デメリット

  • 構造が複雑で重量増加
  • 冷却液の管理・シール性確保が必要
  • 初期コストが高い傾向

水冷は、 連続高出力が求められるEV、建機、船舶、重負荷装置 に向いています。

比較まとめ(傾向)

項目 空冷 水冷
冷却性能
構造のシンプルさ
メンテナンス性
重量 軽い 重い
コスト
高温環境対応 弱い 強い
主な用途 AGV、小型EV、補助電源 建機、船舶、大型EV、連続高負荷機器

選定時のポイント

  • 出力密度と放熱量

    モジュール1個あたりの発熱量を想定し、空冷で吸収できる熱量を超える場合は水冷を検討します。

  • 使用環境

    周囲温度や設置スペースが制限される場合は、効率重視の水冷が有利です。  屋内常温環境や軽負荷用途では、空冷のシンプルさがメリットになります。

  • 保守性と運用コスト

    水冷は冷却液の補充・交換が必要なため、運用コストも含めた設計判断が必要です。

  • 冷却制御との連携

    BMSやサーミスタ制御と連携することで、冷却ファンやポンプの効率制御が可能になります。  エネルギー効率と静音性を両立させる工夫もポイントです。

AMPHERRの冷却構成

AMPHERRのバッテリーは、用途や環境に応じて空冷/水冷の両方式に対応しています。 高出力・高電圧モデルでは水冷プレートを採用し、熱伝導経路を最適化。 小型・軽量モデルでは空冷を採用し、軽量化とメンテナンス性を優先しています。 冷却方式の選定は、単に熱対策だけでなく、全体システム効率・信頼性・寿命コストを左右します。 AMPHERRでは、使用条件に合わせた冷却設計の提案が可能です。

まとめ

空冷は「シンプルで軽量」、水冷は「高性能で安定」。 どちらが優れているというより、求める出力密度・使用環境・保守条件によって最適解が変わります。 電動化が進む現在、冷却設計はもはや付属機能ではなく、性能・寿命・安全を左右する中核要素です。 システム全体の観点から、最適な冷却方式を選定することが重要です。

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