なぜ産業EVには「冷やすだけでは不十分」なのか ──バッテリー熱マネジメント最前線
産業用モビリティの電動化が加速しています。建設機械、港湾・空港車両、物流ロボット、特殊車両──これまでディーゼルエンジンが中心だった領域でも、低排出化と自動化に向けてバッテリー駆動へ移行が進んでいます。
しかし同時に、多くの開発現場で課題となっているのが、バッテリーの熱マネジメントです。電動化というと「発熱を抑える」「冷却する」といったイメージが先行しがちですが、実際には “冷却だけ”では十分ではありません。
なぜ熱が課題になるのか
リチウムイオンバッテリーは、温度変化に敏感です。 高温環境では化学劣化や安全性低下が進み、低温環境では出力が低下し、充電効率も下がります。
特に産業用途では、
- 高トルク・高負荷運転が長時間続く
- 繰り返し充電や急速充電が多い
- 振動、粉塵、泥水、高湿度、寒暖差 など
- 屋外/全天候での利用が一般的
といった過酷条件が重なります。
そのため、バッテリーが 常に適正温度帯で動作すること が、性能維持と安全確保の両面で極めて重要です。
熱マネジメントは「冷却+加熱+制御」
EVバッテリーの熱マネジメントで求められるのは、単純な“冷却”ではありません。
- 冷却:高負荷時、連続駆動時、急速充電時の温度上昇対策
- 加熱:寒冷環境での性能維持、始動性向上、充電受け入れ性改善
- 制御:システム全体のエネルギー効率最適化
特に冬季の現場では、冷やすより 温める技術 が重要になる場面も少なくありません。 つまり、熱マネジメントとは 冷やすだけでなく“温度を管理する技術” なのです。
液冷方式が選ばれる理由
産業EVでは、空冷ではなく 液冷(クーラント循環) が採用されるケースが増えています。理由は以下の通りです。
- 温度制御の精度が高い
- 高負荷でも安定した冷却性能
- 騒音や粉塵の影響が少ない
- 加熱回路との統合が容易
- コンパクトな設計が可能
特にバッテリーパック、インバータ、モーター、充電装置など パワートレイン全体の冷却統合 が求められる中、液冷方式は柔軟性と拡張性を持つ方式といえます。
産業EVに適したBTMS選定のポイント
開発時には、以下の視点が重要になります。
- 必要冷却能力(kW)と負荷プロファイル
- 対応電圧(24V/高電圧)
- 耐候性・耐振動・保護等級
- 規格/安全認証
- 制御方式(CAN通信 等)
- 低温時の加熱能力
- 完成車側の設計自由度(ユニット型/統合型)
用途と環境に応じた 最適な熱マネジメント構成 が、EVの性能・寿命・安全性を左右します。
おわりに
産業の電動化は、環境対応だけでなく
省エネルギー化や運航効率向上、屋内作業の快適性改善
といった新たな価値を生み出しています。
その中で、
熱マネジメント技術は車両性能を支える“縁の下の力持ち”
です。
今後、電動建機・物流ロボット・特殊車両の普及が本格化するにつれ、より高度なBTMS(Battery Thermal Management System)が求められる時代になるでしょう。
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