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油路の奥部でシール可能なエキスパンダープラグ

エキスパンダープラグには、通常タイプ以外にカタログに載せていない特殊タイプのプラグも存在しています。今回は、世界中の多段A/Tトランスミッション(8速、9速、10速)に多数採用されている特殊プラグを紹介します。

MB850-060E-H125 外径6.00mm スリーブ高さ12.5mm

通常の打ち込み式MB850-060のスリーブ高さ6.5㎜に対して、MB850-060E-H125 のスリーブ高さは12.5㎜と6㎜も長くなっています。 なぜ、このような形状にしてあるのでしょうか?
耐圧性能はどちらも35Mpaになります。

多段A/T:メインシャフトの奥でシールが必要

多段A/Tのメインシャフトには、クラッチ作動ポートを繋ぐ油路があり、ボールでシールする場合、どうしてもデッドスペースと呼ばれるエリアに作動油が流れる状態が出来てしまいます。デッドスペースに気泡が入った場合、異音や油圧伝達遅れなど、さまざまなトラブルの原因になる為、メインシャフト油路の奥で信頼性のあるシール方法が求められました。

横穴に脱着可能なピンで押さえてボールを圧入

レイアウト上、装着穴に段加工ができない為、横穴から脱着可能なピンを挿入し、プラグ底面を押さえた状態で、細長い特製ポンチにてボールを圧入する方法が考えられました。

通常MBプラグでは、油路奥部での圧入時にスリーブが歪む

通常のMBプラグでは、圧入時にスリーブ底面と押さえピンとの接点が線になる為、スリーブが歪んでしまいます(写真左)。

この問題を解決する為、試行錯誤の末、プラグ全長を6㎜長くすることで歪まない形状を見つけ出し製品化されました(写真右)。

世界中の高級車へ採用されています

MB850-060E-H125は、世界各地の大手T/Mメーカーや自動車メーカーで製造されている、複数の多段A/Tトランスミッションに採用されています。(年間500万個以上)
そのほとんどが、高級車もしくはプレミアムスポーツカーへ搭載されているA/Tミッションになり、高性能を達成するために、エキスパンダープラグはなくてはならない部品です。

圧入によるシール方法

ボール圧入によりスリーブと呼ばれるゲージ(かご)を押し広げてシールするタイプ(打ち込みタイプ)です。

必要な加工は下穴加工

打ち込み式MBプラグは、シールする穴に対してプラグを取り付けるための下穴加工が必要です。
下図でいうd2のスペースを指します。このd2はプラグ径d1に対して0+0.002mmの公差が目安です。

ボールをまっすぐに圧入するだけ

サイズ毎に取付にあたって、ボール圧入のストローク値(打ち込み量)が規定されています。 下図でいうS値を指します。治具を使ってボールをこの押し込み量まっすぐに圧入します。

まとめ

今回は、カタログに載っていない特殊なエキスパンダープラグを紹介してみました。決して人の目につかないところで使われていますが、街角で高級車を見かけた時や自分で運転する機会があれば、縁の下で活躍するエキスパンダープラグの事を思い出していただければ嬉しいです。

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