Φ1.5㎜の穴をがっちり塞ぐ
エキスパンダープラグには、使用用途別にいくつかのタイプ (打ち込みタイプや、引き抜きタイプ)がありますが、 ここでは一番小さいタイプのプラグを紹介したいと思います。
MB600-093A 外径0.093 Inch = 2.368 mm
MB600-093A がエキスパンダープラグの中で、一番小さいサイズの物になります。
封止する下穴(油路)の最大径が1.55mmで、常用圧で45Mpaまで使用可能です。

スリーブの加工は、高級腕時計の部品並みの精度で行われています
スリーブ(ギザギザのついたバケツの様な部品)の外径寸法は、2.368 mm +0/ー0.025 mmの精度で加工されています。
この微細な加工は、スイス製高級腕時計に使用される精密部品を製作している加工技術だからこそ可能な精度になります。
ボールサイズは1.588 mm
MB600-093Aには、直径 1.588㎜のステンレスの鋼球が使われています。 専用のポンチで、この小さなボールを圧入し(圧入ストローク約0.78㎜) バケツ状のスリーブを押し広げることで、45Mpaの耐圧保証を実現しています。
たったの0.09gという軽量部品
MB600-093A 1個の重さは、たったの0.09gです。自然界でいうと、ミツバチ1匹とほぼ同じ重さだそうです。 10個で、1円玉とほぼ同じ重さになります。 こんなに小さくて軽いプラグですが、一度油路をシールすると、半永久的に45Mpaの耐圧をキープできる優れものです。
どんな製品に使用されているか?
MB600-093Aは、エキスパンダープラグの中で、最小サイズになりますが、 さまざまな製品に採用されています。採用例をいくつか紹介します。
自動車用ブレーキ圧 圧力センサー
大手自動車部品メーカーが製造する、ブレーキ圧力センサーに採用されています。 自動車業界は、現在電動化の波が押し寄せていますが、ブレーキに関しては、 従来の油圧作動ブレーキが今後も主流を占めていくものと考えられています。 ブレーキ圧のセンシングは、ABS, VDC,自動運転などの制御に無くてはならない重要な項目の一つです。

油圧制御機能付き義足
国内大手メーカーが製造する、油圧制御機能付き義足に採用されています。 義足とはいえ継手部分の使用圧力は20Mpa程度と高圧で、1.5㎜程の油路を効果的に封止する方法は多くありません。 耐圧性能が45MpaまであるMB600-093Aは最適な封止方法であると言えます。

自動車向けブレーキマスターシリンダー
大手自動車部品メーカーが、日本で設計・製造している部品を海外生産に切り替える際に、 油路の加工精度や、封止に使用する鋼球の精度が日本と同等にできず、油漏れが多発したことがあります。
品質を維持するために、油路径の加工バラツキに強い、MB600-093Aを鋼球の代わりに採用した事例があります。 エキスパンダープラグであれば、加工精度がさほど高くなくても、高い信頼性を得ることが出来ます。
圧入によるシール方法
ボール圧入によりスリーブと呼ばれるゲージ(かご)を押し広げてシールするタイプ(打ち込みタイプ)です。

必要な加工は下穴加工
この打ち込み式MBシリーズプラグは、シールする穴に対してプラグを取り付けるための下穴加工が必要です。 下図でいうd2のスペースを指します。このd2はプラグ径d1に対して0+0.002mmの公差が目安です。

ボールをまっすぐに圧入するだけ
サイズ毎に取付にあたって、ボール圧入のストローク値(打ち込み量)が規定されています。 下図でいうS値を指します。治具を使ってボールをこの押し込み量まっすぐに圧入します。

まとめ
今回は、エキスパンダープラグの最小ラインアップであるMB600-093Aに焦点を当ててみました。
米粒ほどの大きさになりますが、スイス製高級腕時計部品並みの繊細な加工精度で作られた、 決して油漏れが許されない重要箇所に使用されているプラグになります。
φ1.5mmをがっちりとシールすることができる世界を是非お試しください。
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