流量制御弁の制御回路!3つの制御方式の基本を解説
油圧の知識(第6回)
株式会社マツイでは、様々なメーカーの油圧機器を単品だけでなく、油圧ユニットや油圧システムとしてご提供しております。
こちらの記事では、油圧システムを構築する上で大切な油圧回路の基本を解説していきます。
目次
油圧回路とは?
油圧回路とは、アクチュエーターがどのような油圧仕様で動作するのかを、さまざまな記号を使って油圧システム全体を表したものです。一般的にJIS記号を使って表します。
別な表現にすると油圧回路は、要求通りの力と速度を目的の方向へ動かすための設計図ともいえます。
油圧システムが適切かどうか?効率よく仕事ができるか?効果的な設計か?などさまざまな検証も油圧回路で行います。
流量制御弁とは?
流量制御弁とは、油圧バルブの中で流量をコントロールするバルブになります。流量をコントロールすることで油圧アクチュエーターである油圧シリンダーや油圧モーターの速度を制御します。
流量制御弁はスピードを調整する油圧バルブになります。
流量制御弁には以下のバルブが分類されます。
絞り弁(スロットルバルブ/スロットルチェックバルブ)
特長
ハンドルの開閉により、流れる油量を調整します。安価ではあるが、負荷圧力の変化により、流量に影響がでます。
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廣瀬バルブ工業 絞り弁:HT-728シリーズ |
ダイキン油機エンジニアリング 絞り弁:HDFTシリーズ |
ボッシュレックスロス 絞り弁:TC-G-34Xシリーズ |
流量調整弁(フローコントロールバルブ)
特長
ハンドルの開閉により、流れる油量を調整します。圧力補償型や温度補償型などの高機能型があり高価。負荷圧力の変化に関係なく、流量を一定に保ちます。
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ボッシュレックスロス 流量調整弁:2FRM6シリーズ |
廣瀬バルブ工業 流量調整弁:FVP-720シリーズ |
ダイキン油機エンジニアリング 流量調整弁:SFシリーズ |
分流弁/分集流弁(フローデバイダー)
特長
分流弁とは、入口側Pポート1つ/出口側A.Bポート2つの構造で、一般的には流量を均等に2分割する流量制御弁になります。分集流弁とは、逆にA.Bポート側から流入した流量をPポート側1つに集流する機能と分流弁の機能を併せ持つ流量制御弁になります。
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廣瀬バルブ工業 分流弁:FDCシリーズ |
HAWE 分流弁:TQシリーズ |
高美精機 分流弁:FDTシリーズ |
注記)写真やモデル名は執筆者の主観による参考例ですので、上記以外にも多数ございます。
3つの制御方式の概要と特長
流量制御弁での制御方式には3つの速度制御があります。
メーターイン制御(メータイン制御)とは?
アクチュエーターの入口側で速度制御する方式
特長
負荷変動に弱く、負の負荷に対応できない。(暴走防止対策が必要。)

メーターアウト制御(メータアウト制御)とは?
アクチュエーターの出口側で速度制御する方式
特長
負荷変動に強く、負の負荷の場合でも暴走防止ができる。

ブリードオフ制御とは?
余剰流量を流量制御弁を介してタンクへ流すことで、アクチュエーターの入口側へは必要流量のみを流す方式
特長
負荷圧力で油圧シリンダの速度制御ができる。温度変化が大きい場合や負荷変動がある場合は適さない。

メーターイン制御(メータイン制御)回路の解説
アクチュエータの入口側で速度制御する方式
解説回路の例題
油圧シリンダの伸側動作を20L/minのメータイン制御で速度調整した場合の解説をします。
注意事項
- 負荷の状態が正の負荷の場合と負の負荷の場合で回路構成が異なります。
- 負の負荷については、回路構成が異なる為、また、別の機会に解説します。
【油圧回路図】正の負荷の場合

※注記)単位換算:1MPa≒10kgf/cm2とします。
圧力の状態
圧力計 | 圧力値(近似値) | 圧力の状態 |
---|---|---|
P1圧力 | 5MPa | 荷重を動かすのに必要な負荷圧力 |
P2圧力 | (0MPa) | タンクライン圧力 |
P3圧力 | (14MPa) | リリーフ弁の設定圧力近くまで上昇 |
P4圧力 | (0MPa) | タンクライン圧力 |
P5圧力 | 14MPa | リリーフ弁の設定圧力 |
【動作の概要説明】 ピストンロッド:伸側動作(電磁弁SOLb励磁)
油圧ポンプから吐出された流量30L/minの油は、油圧シリンダの必要流入量20L/minに入口側で絞り調整される。余剰流量10L/minは、リリーフ弁設定圧力でタンクへ解放されます。
【補足情報と質問】
油圧シリンダの押側動作は、フルストローク1000mmを速度33.3mm/sで動作しますので約30秒かかります。
わかりますか?よくわからない場合は、
「第3回 油圧シリンダとは?」
の解説を一度ご覧いただけると幸いです。
メーターアウト制御(メータアウト制御)回路の解説
アクチュエータの出口側で速度制御する方式
【解説回路の例題】
油圧シリンダの伸側動作を10L/minのメータアウト制御で速度調整した場合の解説をします。
注意事項
- 負の負荷の場合、圧力P2がリリーフ弁の設定圧力より高くなる場合があるので注意と対策が必要。
アクチュエータの許容圧力にもご注意ください。
【油圧回路図】 正の負荷の場合

※注記)単位換算:1MPa≒10kgf/cm2とします。
【圧力の状態】
圧力計 | 圧力値(近似値) | 圧力の状態 |
---|---|---|
P1圧力 | (14MPa) | リリーフ弁の設定圧力近くまで上昇 |
P2圧力 | 18MPa | ブースト圧力(リリーフ圧力より高い場合があります) |
P3圧力 | (14MPa) | リリーフ弁の設定圧力近くまで上昇 |
P4圧力 | (0MPa) | タンクライン圧力 |
P5圧力 | 14MPa | リリーフ弁の設定圧力 |
【動作の概要説明】 ピストンロッド:伸側動作(電磁弁SOLb励磁)
油圧ポンプから吐出された流量30L/minの油は、油圧シリンダの必要流出量10L/minに出口側で絞り調整される。油圧シリンダの受圧面積より入口側の流入量が20L/minとなり、余剰流量10L/minは、リリーフ弁設定圧力でタンクへ解放されます。
【補足情報と質問】
油圧シリンダの押側動作は、フルストローク1000mmを速度33.3mm/sで動作しますので約30秒かかります。
わかりますか?よくわからない場合は、
「第3回 油圧シリンダとは?」
の解説を一度ご覧いただけると幸いです。
ブリードオフ制御回路の解説
余剰流量を流量制御弁を介してタンクへ流すことで、アクチュエータの入口側へは必要流量のみを供給する方式
【解説回路の例題】
油圧シリンダの伸側動作を10L/minのブリードオフ制御で速度調整した場合の解説をします。
注意事項
- 複数のアクチュエータ回路には使用できません。
【油圧回路図】 正の負荷の場合

※注記)単位換算:1MPa≒10kgf/cm2とします。
【圧力の状態】
圧力計 | 圧力値(近似値) | 圧力の状態 |
---|---|---|
P1圧力 | 5MPa | 荷重を動かすのに必要な負荷圧力 |
P2圧力 | (0MPa) | タンクライン圧力 |
P3圧力 | 5MPa | 荷重を動かすのに必要な負荷圧力 |
P4圧力 | (0MPa) | タンクライン圧力 |
P5圧力 | 5MPa | 荷重を動かすのに必要な負荷圧力 |
【動作の概要説明】 ピストンロッド:伸側動作(電磁弁SOLb励磁)
油圧ポンプから吐出された流量30L/minの油は、油圧シリンダの必要流入量20L/minになるように、余剰流量10L/minを絞り調整します。ポンプ圧力はリリーフ弁設定圧力まで上昇せず、負荷圧力で吐出されます。
【補足情報と質問】
油圧シリンダの押側動作は、フルストローク1000mmを速度33.3mm/sで動作しますので約30秒かかります。
わかりますか?よくわからない場合は、
「第3回 油圧シリンダとは?」
の解説を一度ご覧いただけると幸いです。
アプリケーション
実際に流量制御弁がどんなところに使われているか?
製鉄機械
アプリケーション
工業炉

流量調整弁 フローコントロールバルブ

車両機械
アプリケーション
高圧吸引車

絞り弁 スロットルチェックバルブ

一般産業機械
アプリケーション
射出成型プレス

流量調整弁 フローコントロールバルブ

舶用機械
アプリケーション
定置網船

絞り弁 スロットルチェックバルブ

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油圧シリンダはこちら
「第3回油圧シリンダとは?」の解説はこちら
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執筆者

八十原 貴宏
大阪支店 営業部
油圧装置調整技能士1級
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