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アンロード回路とは? 油圧回路の基本を解説

油圧の知識(第5回)

株式会社マツイでは、様々なメーカーの油圧機器を単品だけでなく、油圧ユニットや油圧システムとしてご提供しております。
こちらの記事では、油圧システムを構築する上で大切な油圧回路の基本を解説していきます。

目次

油圧回路とは?

油圧回路とは、アクチュエーターがどのような油圧仕様で動作するのかを、 さまざまな記号を使って油圧システム全体を表したものです。 一般的にJIS記号を使って表します。
別な表現にすると油圧回路は、要求通りの力と速度を目的の方向へ動かすための 設計図ともいえます。

油圧システムが適切かどうか?効率よく仕事ができるか? 効果的な設計か?などさまざまな検証も油圧回路で行います。

アンロード回路とは?

アンロード(unload)とは、無(un)と負荷(load)で無負荷を意味します。油圧で言う無負荷とは、圧力が低い状態(低圧)を言います。
アンロード回路とは、無負荷運転ができる低圧の油圧回路のことです。

アンロードとは別に、オンロード(onload)という言葉もあります。
オンロード回路は、常時機械を運転する高圧のメイン回路になります。

アンロード回路の目的

アンロード回路には、下記のような目的があります。

  • 油圧システムを低圧で安全に起動することができる。
  • 電動機の電流値を抑えることができる。
  • 油圧ポンプの軸入力を小さくすることができる。
  • 作動油の温度上昇を抑えることができる。
  • 省エネ運転ができる。

アンロード回路の効果

アンロード回路で運転した場合の効果をCASE別で比較説明します。

オンロード運転の場合

油圧シリンダが停止している時は、油圧ポンプの吐出圧力はリリーフ弁の設定圧力になります。 油圧ポンプの吐出流量は、全量がリリーフ弁の設定圧力でタンクに戻ります。 油圧シリンダが停止している時の動力は、すべて損失となります。 その損失分は熱に代わり油温上昇につながります。

参考回路図

運転状況

  • ポンプ吐出量:30L/min
  • リリーフ弁設定圧力:14MPa
  • ポンプ吐出圧力:14MPa
  • ポンプ軸入力:7KW
  • 動作状況:シリンダ停止時(切換弁中立)
ポンプ軸入力の計算

ポンプ軸入力(kW)

  • P:圧力
  • Q:流量

アンロード運転の場合

油圧シリンダが停止している時に、油圧ポンプの吐出流量は、全量が低圧でタンクに戻ります。 油圧シリンダが停止している時の圧力を低圧にすることで動力損失を抑えることができます。 損失を抑えることで油温上昇も抑えられます。

参考回路図

運転状況

  • ポンプ吐出量:30L/min
  • リリーフ弁設定圧力:14MPa
  • ポンプ吐出圧力:1MPa(仮)
  • ポンプ軸入力:0.5KW(仮)
  • 動作状況:シリンダ停止時(切換弁中立)
ポンプ軸入力の計算

ポンプ軸入力(kW)

  • P:圧力
  • Q:流量

CASE1とCASE2の比較効果

油圧ポンプの軸入力はオンロード運転時7KWに対して、 アンロード運転時0.5KWと仮条件での計算ではあるが効果が見込まれます。

【Q&A】ピストンポンプにアンロード回路は必要ですか?

Q 可変容量形ピストンポンプにアンロード回路は必要ですか?

A 一般的には、可変容量形ピストンポンプをアンロード運転させることは あまりないかもしれません。各油圧メーカーにより考え方も異なりますので 不要という意味ではありません。
さらなる省エネ効果を目指す場合、二重安全を考慮する場合、 ポンプ吐出ライン(Pライン)に常時高圧を立てたくない場合など目的もあります。 私が回路設計する場合は、必ずアンロード回路を設けています。

切換弁の中立位置によるアンロード回路

油圧ポンプから吐出された油は、切換弁を介して、低圧で全量がタンクへ戻ります。
アンロード時の圧力は、バルブや配管の圧力損失分だけが抵抗として発生します。

切換弁の油圧シンボル

切換弁が中立位置の油圧シンボルはPT接続やPTバイパスと呼ばれます。

電磁切換弁(スプリングリターン型)
手動切換弁(スプリングリターン型)

注意事項

切換弁のスプールが中立位置でのアンロード回路なので、全流量が切換弁を介してタンクへ戻します。 切換弁の圧力損失に注意してください。

参考回路図

機器名称
  • 油圧シリンダー
  • スロットルチェックバルブ(メーターアウト型)
  • 電磁切換弁(PTバイパス型)
  • インラインチェックバルブ
  • リリーフバルブ(パイロット作動型)
  • 圧力計(グリセリン入り)
  • ゲージダンパー
  • 油圧ポンプ(固定容量型)
  • カップリング
  • 電動機
  • リターンフィルター(10ミクロン)
  • サクションストレーナー(150メッシュ)
  • 給油口兼エアブリーザー
  • 油面計
  • 温度計(バイメタル式)
  • タンク

補足事項

1台のアクチュエーターと切換弁の場合にのみ使用します。

電磁弁付きリリーフ弁によるアンロード回路

油圧ポンプから吐出された油は、電磁弁付きリリーフ弁を介して、 低圧で全量がタンクへ戻ります。 アンロード時の圧力は、バルブや配管の圧力損失分だけが抵抗として発生します。

電磁弁付きリリーフバルブの油圧シンボル

電磁弁のノーマルポジションにより2種類あります。

常時開:ノーマルオープン

通常時:アンロード
励磁時:オンロード

常時閉:ノーマルクローズ

通常時:オンロード
励磁時:アンロード

補足事項

一般的には、常時開(ノーマルオープン)の電磁弁付きリリーフ弁を使用することが多いと思います。 機械を動かす時だけオンロード運転にします。

参考回路図

機器名称
  • 油圧シリンダー
  • スロットルチェックバルブ(メーターアウト型)
  • 電磁切換弁(PTバイパス型)
  • インラインチェックバルブ
  • 電磁弁付きリリーフバルブ(ノーマルオープン型)
  • 圧力計(グリセリン入り)
  • ゲージダンパー
  • 油圧ポンプ(固定容量型)
  • カップリング
  • 電動機
  • リターンフィルター(10ミクロン)
  • サクションストレーナー(150メッシュ)
  • 給油口兼エアブリーザー
  • 油面計
  • 温度計(バイメタル式)
  • タンク

補足事項

複数のアクチュエーターと切換弁の場合にも使用可能です。 切換弁はPポートがブロックされた油圧シンボルを選定してください。

アプリケーション

実際にアンロード回路がどんなところに使われているか?

製鉄機械

アプリケーション

工業炉

工業炉

電磁弁付きリリーフバルブ

車両機械

アプリケーション

高圧吸引車

高圧吸引車

比例マルチバルブ

一般産業機械

アプリケーション

射出成型プレス

射出成型プレス

電磁弁付きリリーフバルブ

舶用機械

アプリケーション

定置網船

定置網船

舶用切換弁

マツイの取扱製品

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舶用弁はこちら

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油圧回路のご相談から油圧のプロがご対応させていただきます。

ぜひご相談ください!

執筆者

八十原 貴宏

大阪支店 営業部
油圧装置調整技能士1級

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油圧装置調整技能士を始め、有資格者が多数在籍。お客様の専門的なご相談にもお答えできる油圧機器のプロがご対応。お気軽にお問い合わせください。

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