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油圧ポンプとは?種類・仕組み・特長の基本を解説

油圧の知識(第2回)

株式会社マツイでは、様々な油圧機器を取り扱っています。
今回は、油圧ポンプの基本を解説していきたいと思います。

油圧ポンプとは?

油にかける圧力のことを「油圧」と呼びます。
油圧ポンプとは、油に圧力をかけ、吸入した油を吐出することで「圧力」と「流量」の流体エネルギーを発生させる油圧装置です。 電動機やエンジンによって与えられた機械的な回転エネルギーを流体エネルギーに変換する油圧の動力源の役割を担います。

油圧ポンプの種類

油圧ポンプ吐出量(押しのけ容積)の調整可否から分類

固定容量形油圧ポンプ

1回転当たりの吐出量(押しのけ容積)が一定の油圧ポンプ。
吐出量(押しのけ容積)の調整が不可。

可変容量形油圧ポンプ

1回転当たりの吐出量(押しのけ容積)が可変の油圧ポンプ。
吐出量(押しのけ容積)の調整が可能。

油圧ポンプの構造から分類

油圧ポンプの特長

一般的な概略特長をご紹介します。

ギヤポンプ

  • 構造が簡単である
  • 吸込能力が最も高い
  • コンパクトである
  • 安価である
  • 可変容量形にはできない

ベーンポンプ

  • 長寿命である
  • 脈動が少ない
  • 騒音が低い
  • 安定した性能を得易い
  • 保守がやり易い

ピストンポンプ

  • 構造が複雑である
  • 高圧化が可能である
  • ポンプ効率が最も良い
  • 吸込能力が最も低い
  • 油の汚染に最も敏感である
  • 多種多様な制御方式がある

油圧ポンプの特長比較表

一般的な概略内容の特長比較です。

ギヤポンプ ベーンポンプ ピストンポンプ
外接形 内接形 平衡形 斜板形 斜軸形
定格圧力 中圧 低~高圧 中~高圧 高圧 高圧
吐出流量 少~中 少~中 少~中 少~大 少~大
定格回転数 高速 中速 中速 低~中速 低~中速
騒音 非常に大きい 小さい 小さい やや大きい 大きい
脈動 やや大きい 少ない 少ない やや大きい 大きい
寿命 普通 普通 長寿命 長寿命 普通
効率 比較的悪い 普通 普通 比較的良い 良い
可変容量形の有無
(非平衡形=有)
多連化の可否 可能 可能 可能 可能 不可
作動油管理レベル 低い 普通 普通 高い 普通
価格 安価 普通 普通 高価 高価

注記) 執筆者の主観が一部含まれます。

油圧ポンプの仕組み

油圧ポンプの仕組みについて概略説明します。

外接形ギヤポンプ

ケーシング内で2つの歯車が外接で噛み合い、回転によって噛み合い部が離れる時に空間が生じ油を吸い込む。 空間には油が充填される。 ケーシングの内面にそって油は吐出側に導かれる。 噛み合い部により吸込側と吐出側は遮断されている。

内接形ギヤポンプ

原理は外接形と同じです。2つの歯車が内接しながら噛み合う仕組みです。

ベーンポンプ(平衡形)

ロータを回転させると遠心力と油圧力でベーンが張り出します。 ベーンはカムリング内面に接してしゅう動します。 ベーン間の油室は、カムリングのカーブにより容積が変化します。 油室が拡がるエリアに吸い込みポートが設けられている。 油室が狭まるエリアに吐出ポートがあり強制的に油は吐出される。 ロータの外周に働く油圧が平衡しているので平衡形と呼ばれる。

斜板形アキシャルピストンポンプ

軸とシリンダブロックは、スプラインで結合されており、同時に回転します。 ピストン先端は、スリッパを介して、斜板に常時接しながら回転しています。 斜板の傾きに比例してピストンはストロークします。 ポンプ吐出量は吐出量調整ネジで調整が可能です。 ポンプ最高使用圧力は、圧力調整ネジで設定可能です。 ポンプ吐出圧力が設定圧力に近づくと、吐出量は減少します。 アクチュエータの動作が停止状態になると、斜板は垂直になり吐出量がほぼゼロになります。 ゼロ吐出の状態で設定圧力を保持します。 軸入力は減少します。

斜軸形アキシャルピストンポンプ

軸側にある駆動フランジとシリンダブロックはピストンと連結棒の球状接手によって連結されています。 軸とシリンダブロックは、同時に回転します。 軸の傾きによりピストンがストロークすると、油は固定された弁板にある吸込みポートからシリンダブロック内に導かれます。 導かれた油は、吐出ポートより吐出されます。

油圧ポンプの動力計算

流体動力は圧力と流量の積(掛け算)で表されます。流体動力はポンプ軸出力を意味します。 油圧ポンプの動力とは、電動機やエンジンで油圧ポンプを駆動させるのに必要な力のことです。 必要動力としてポンプ軸入力は、下記の計算式で計算できます。

流体動力(KW)の計算式

ポンプ軸出力(kW)

Lo(kW) = P(MPa) × Q(L/min) 60

P:圧力 Q:流量

流体動力(PS)の計算式

ポンプ軸出力(PS)

Lo(PS) = P(MPa) × Q(L/min) 44.1

P:圧力 Q:流量 PS:馬力

ポンプ必要動力(KW)の計算式

ポンプ軸入力

LS(kW) = P(MPa) × Q(L/min) 60 × μp(全効率)

P:圧力 Q:流量 μp:ポンプ全効率

補足) ポンプ全効率を加味したうえで電動機容量の選定が必要となります。

油圧ポンプ選定のポイント

油圧ポンプの選定に厳格なルールはありません。設置環境、作動油の種類、使用条件、ポンプ仕様や特長、客先条件など色々な条件を考慮しながら選定します。各メーカーにより製作しているポンプも異なりますので、メーカーの製品ラインナップや特長を理解する事もポンプ選定には重要です。自身の設計コンセプト、趣味、思考なども実際は選定条件に含まれます。 近年のトレンドとしては、世界的にも斜板形ピストンポンプが主流になってきていると思われます。理由としては、優れた制御性(制御バリエーション)、効率、サイズ:容量(流量バリエーション)などが考えられます。

下記に油圧ポンプの特長から選定のポイントをまとめました。

外接形ギヤポンプ

騒音が問題にならず、固定容量形で良い場合や安価な対応が必要な場合に選定します。

内接形ギヤポンプ

低騒音の要求があり、固定容量形で良い場合に選定します。

ベーンポンプ(平衡形)

低騒音の要求があり、固定容量形で良い場合に選定します。

斜板形ピストンポンプ

豊富なバリエーション、汎用性、世の中のトレンドより優先的に選定します。

斜軸形ピストンポンプ

比較的使用環境が悪い場合に選定します。

ラジアルピストンポンプ

超高圧使用やマルチ吐出などの特殊用途で選定します。

アプリケーション

実際に油圧ポンプがどんなところに使われているか、例をご紹介します。

製鉄機械

アプリケーション

工業炉

工業炉

油圧ポンプ

斜板形ピストンポンプ

斜板形ピストンポンプ

車両機械

アプリケーション

高圧吸引車

高圧吸引車

油圧ポンプ

外接形ギヤポンプ

外接形ギヤポンプ

舶用機械

アプリケーション

定置網船

定置網船

油圧ポンプ

ベーンポンプ

ベーンポンプ

マツイの取扱製品

マツイでは様々な油圧ポンプを取り扱っています。
導入のお手伝いはもちろん、レトロフィット・省エネ・油圧ユニット化についても油圧機器のプロがご対応させていただきます。 ぜひご相談ください!

執筆者

八十原 貴宏

大阪支店 営業部
油圧装置調整技能士1級

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油圧装置調整技能士を始め、有資格者が多数在籍。お客様の専門的なご相談にもお答えできる油圧機器のプロがご対応。お気軽にお問い合わせください。

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