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見えないところもきれいにしよう!生物ろ過の基本

おさかなマイスターの養殖講座(第6回)

生物ろ過とは

物理的にゴミを取り除いても、魚にとって住みやすい環境になったわけではありません。
一見見た目がきれいでも水中には目に見えない様々な物質が溶け込んでいます。代表的なものがアンモニアです。
アンモニアは飼育生物の排泄物・エラ・餌の食べ残しから発生し、毒性が高く非常に有害です。
有害物質であるアンモニアをバクテリアの力を利用して、 毒性の低い硝酸に分解していくプロセスを生物ろ過と呼びます。
このバクテリアを総称して「硝化細菌」と呼びます。

有害物質アンモニアの発生

生物ろ過のプロセス

生物ろ過とは「有害物質であるアンモニアを毒性の低い硝酸に分解していくプロセス」であると前項でご説明しましたが、 ここでは具体的な分解工程をイラストで記しています。
バクテリアの働きにより、毒性の強いアンモニアから比較的低毒な亜硝酸、硝酸と分解していきます。

しかし亜硝酸、硝酸も低毒とはいえ要注意です。
亜硝酸は海水中に大量に含まれる塩化物イオンが妨害物質となり比較的低毒と考えられています。
しかし淡水では妨害物質がほとんど存在しないため、淡水魚体内に溶け込みやすく呼吸障害を引き起こす原因になりますので特に要注意です。 また硝酸も蓄積すると摂餌障害といった魚への悪影響を引き起こします。

呼吸障害

摂餌障害

硝酸の除去について

アンモニアと亜硝酸は生物ろ過のプロセスを経て、毒性の低い硝酸へ分解されますね。
では、硝酸はどのように処理すれば良いのでしょうか?
硝酸は嫌気的環境(酸素濃度が低い環境)で働く脱窒菌によって窒素と水に分解され水中に放出されます。 これを脱窒と呼びます。

脱窒反応

脱窒を行うには一つ大きなハードルがあります。それはいかに「嫌気的環境を作るか」という点です。 魚の生育や生物ろ過にとって酸素は必要不可欠です。 しかし脱窒反応をさせるためには意図的に嫌気的環境を作る必要があるため、導入のハードルとなっているのです。 一方、近年では好気的環境でも働く脱窒菌も発見されており、実験的に採用されているケースもあります。 (例 「(株)プレスカ製 好気性脱窒装置」 好気性脱窒菌の餌となるセルロースをろ材とし、常在菌から増やすことが可能)

脱窒槽イメージ

いずれにせよ専用の脱窒設備を用意する必要があるため、その分コストは掛かります。 そのため水質維持に繋がる最も低コストで効果的な方法として、弊社では定期的な換水を推奨しております。

定期的な換水で硝酸を排出

以上、「6、見えないところもきれいにしよう!生物ろ過の基本」でした。 生物ろ過の基本的な役割やしくみを解説させて頂きましたが、いかがだったでしょうか? 疑問や不安などありましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

次回は生物ろ過の第2弾 「7.生物ろ過で水質を適切に管理しよう!」を公開予定です。 具体的な水質の管理方法を解説させて頂きますのでお楽しみに!

執筆者

芝原 英行

東京海洋大学院卒。学生時代はウナギの完全養殖の研究に従事。
(株)マツイ入社後、2年目におさかなマイスターを取得。称号の重圧に日々プレッシャーを感じている。

カキ、サバ、ウナギ、マグロ、チョウザメ等、様々な魚介類の養殖設備・実験水槽等に携わり、趣味はダイビング・アクアリウムと魚漬けの日々を送っている。

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*引用:日本おさかなマイスター協会Webサイト

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