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生物ろ過で水質を適切に管理しよう!

おさかなマイスターの養殖講座(第7回)

アンモニア・亜硝酸の数値を測ってみよう

適切な水質を管理するための第一ステップとして、まずは飼育水のアンモニア・亜硝酸の数値を測ってみましょう。
市販の簡易水質計測キットで定期的に数値を測定します。

  
  

※新しい技術としてアンモニア値を連続測定できる計測器も開発されており、今後実用化が期待できます。
 手間の掛かる手作業の計測は必要なく、自動化や常時監視により24時間体制での水質管理が期待できます。

アンモニア濃度が高いとどうなるの?

 

亜硝酸濃度が高いとどうなるの?

 

※魚種や飼育条件により異なりますのであくまで目安になります。

水中のアンモニアってどんな状態?

毒性の異なる2種類のアンモニア

飼育水中のアンモニアは「非解離アンモニア(NH3)」と「アンモニウムイオン(NH4+)」の状態がそれぞれ存在します。
重要なのはこれら2つの毒性が大きく異なることです。

非解離アンモニアは魚の体内に溶け込みやすく、細胞機能に障害を引き起こすため、アンモニウムイオンの300~400倍の毒性があると言われています。
非解離アンモニアを0に近い状態で維持することが、魚の健全な飼育における一つの目安と言えます。

 

注意すべきは「PH」と「水温」

PHとは水が「酸性」か「アルカリ性」かを表す指標、水素イオン濃度指数(potential of hydrogen)の略称です。
0〜14で表され0に近い程強酸性となり、逆に14に近いほど強アルカリ性ということになりますが、
PHが1上がる毎にアンモニアの毒性は約10倍に上がるため注意が必要です。
また水温にも要注意です。10℃上がると、アンモニアの毒性は約2倍になります。

 

 

適切な飼育環境を作るには?

冒頭でアンモニアや亜硝酸が増えてしまうと、魚に悪影響が出ることをお話しました。
この章ではこれらの有害物質を分解して、魚にとってより良い飼育環境を作る方法をご紹介します

有害物質を分解してくれるバクテリアの住処を作ろう!


住処となる「生物ろ材」の投入・増設(表面積が大きく軽量でメンテナンスのしやすい素材が適しています。)
   例 マツイバイオフィルター


バクテリアを高濃度で配合した「濃縮硝化細菌」の投入


※ろ材とバクテリアを投入したら、次はバクテリアの繁殖に必要な酸素と栄養を加えましょう!
十分なエアレーションと、適切な施肥(硫酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)を投入する、または少量の生体を飼育してください。また ろ材が汚れたからと言って、全てのろ材を一気に交換してはいけません。せっかく定着したバクテリアが一気にいなくなると水質が悪化してしまいます。
交換するときは全量ではなく少しずつ交換しましょう。

アンモニアや亜硝酸が検出されたら!?

前章でアンモニアや亜硝酸を分解して適切な飼育環境を作る方法をお話ししました。
この章ではこれらの数値が基準値以上に増えてしまったときの対処方法をご紹介します。

最も簡単な対処法は水を換えること!

但し頻繁な水替え、及び大量の水替えは水質の急激な変化で生体にダメージが出るのでNGです。
1日数%~多くとも30%までに留めてください。
 ※但し、かけ流し飼育を前提としている設備は除きます。

物理ろ過を強化しよう!

養殖講座第5回で、目に見える汚れを取るための「物理ろ過」についてお話ししましたが、
この物理ろ過が機能していないと、アンモニアの発生源となるフンやエサの食べ残しが蓄積され、
どんどん水質が悪化してしまいます。
物理ろ過を強化して、アンモニアの発生源を取り除けるかどうかが、水質安定に繋がります。

・目合の細かいフィルターの追加
より細かい汚れを除去できますので、アンモニアの発生源となるフンやエサの食べ残しを減らすことが出来ます。どのようなフィルターがあるのかは、【 養殖講座第5回 】をご参照下さい。

・泡沫分離装置の増設
水中には目に見える汚れだけでなく、水に溶け込んでいる汚れがあります。
そういった微細な汚れを、気体と液体の境界面に汚れが吸着する性質を利用し、泡の力で汚れを吸着させ、その泡を水中より取り除き水質浄化するのがこの装置です。使用環境は海水に限定されますが、水質向上に非常に効果的です。詳細は【 養殖講座第5回 】をご参照下さい。

生物ろ過を強化しよう!

1.ろ材に汚れが詰まっていませんか?

生物ろ材には徐々に汚れが付着してきますので、定期的に洗浄する必要があります。
汚れたろ材を取り出し、飼育水の一部を用いて洗浄してください。
水道水で洗い流してしまうと、せっかく付着していたバクテリアが流れ落ちてしまいます。

2.水はろ材を通過していますか?

ろ材に付着しているバクテリアと飼育水が接触しなければ、ろ過ができません。
ろ過槽に仕切りを設けるなど水の流れを工夫して、より効率的にろ材と水を接触させましょう。
またバクテリアには酸素が不可欠です。しっかりとろ材に給気して酸素が行き届いているか確認しましょう。

良くない事例)
写真のようにろ材が汚れたまま放置しておくと、水がろ材を通過せずろ材の上を流れてしまいます。


3.熟成されたろ材を移設しましょう。

すでに別の水槽で使用されている、バクテリアが定着したろ材を投入するのが最も手っ取り早い方法です。
但し、元の水槽で病気などが発生していないことを確認してからご使用ください。


以上「7.生物ろ過で水質を適切に管理しよう!」でした。
アンモニアや亜硝酸が生物に与える影響や、増えてしまったときの対処方法を解説させて頂きましたが、いかがだったでしょうか? 生体の命に直接関わってくることなので、日々のメンテナンスを適切に行い理想的な飼育環境の維持を目指してくださいね。
疑問や不安などありましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

次回はいよいよ生物ろ過の最終回「8.ろ材の特長を把握して選定しよう!」です。
数あるろ材の特長や選び方、メンテナンス方法について解説します。

執筆者

芝原 英行

東京海洋大学院卒。学生時代はウナギの完全養殖の研究に従事。
(株)マツイ入社後、2年目におさかなマイスターを取得。称号の重圧に日々プレッシャーを感じている。

カキ、サバ、ウナギ、マグロ、チョウザメ等、様々な魚介類の養殖設備・実験水槽等に携わり、趣味はダイビング・アクアリウムと魚漬けの日々を送っている。

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*引用:日本おさかなマイスター協会

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