水槽の選定について
おさかなマイスターの養殖講座(第4回)目次
飼育密度について
飼育水量に対し、出荷量ベースでどのくらいの割合の魚を入れるかが重要です。養殖では概ね1%程度が一般的な目安となります。
魚 10kg 水槽 1000L = 1%
もちろん魚種や、給餌量・換水量等の飼育方法によってこの数字は異なります。 養殖ではこの密度をいかに上げ、効率的に飼育するかが課題になります。 高密度で魚を飼育すれば当然水の汚れも早く、水処理には相応の設備・手間が必要になります。
海産魚では3.5%程度の密度が最高と言われますが、中には10%近い密度での飼育事例もあります。
淡水魚は魚種によって大きく異なり、例えばチョウザメでは3%、ウナギでは10%以上の事例もあります。
飼育生物の生態について
飼育生物の生態に応じて、水槽の形状・材質を考える必要があります。 泳ぎ回る魚か、底生でじっとしている生物か、砂に潜るのか、深さが必要か等を考える必要があります。
水槽の形状について
丸形と角形の水槽、どちらが良いのでしょうか。
それぞれの特長を比較します。
丸型水槽
メリット
- 均一に水圧が広がるため、水槽膨らみ防止のための補強が少なく済みます。
- 水槽内で水が滞りにくく、中央の排水部に向けた流れを作ってやれば、底部に溜まったゴミも排出されやすくなります。
- 泳ぎ回る魚にとっても一定方向の流れができるため、飼育しやすい構造です。
デメリット
- 設置する際にデッドスペースが大きく、同じ面積で角形と丸形では約20%の面積差ができてしまいます。輸送時も同様です。
- 壁面が湾曲しているため、樹脂タンク等への配管取り付けも注意が必要です。
角型水槽
メリット
- 限られたスペースにも無駄なく設置できます。
- 水槽に仕切りや配管の加工が行い易く、飼育だけでなくろ過槽等の別用途での使用もしやすくなります。
デメリット
- 水の流れが滞る部分ができ、飼育の際にゴミが溜まる場所ができてしまいがちです。
- 水槽が膨らまないよう、頑丈な補強が必要となり、その分重量も重くなります。
水槽選定のまとめ
実際は上記のことに加え、設置予定場所の広さや構造、耐荷重、最終的な出荷時の重量など、様々な要因を加味して選定する必要があります。 お客様のご要望をお聞かせ頂ければ、弊社の専門スタッフがご提案させて頂きますので、お気軽にお問い合わせください。
執筆者
芝原 英行
東京海洋大学院卒。学生時代はウナギの完全養殖の研究に従事。
(株)マツイ入社後、2年目におさかなマイスターを取得。称号の重圧に日々プレッシャーを感じている。
カキ、サバ、ウナギ、マグロ、チョウザメ等、様々な魚介類の養殖設備・実験水槽等に携わり、趣味はダイビング・アクアリウムと魚漬けの日々を送っている。
おさかなマイスターって?
さかなをおいしく、賢く食べるために、さかなの魅力を伝えるために魚介類の旬、栄養、産地、漁法、調理、取扱方法などを学びさかなの魅力や素晴らしさを伝える「さかなの伝道師」です*。
弊社(株式会社マツイ)には「おさかなマイスター」の有資格者が在籍しております。当ページでは有資格者の監修の元、養殖にまつわる専門知識をお伝えしていきます。
*引用:日本おさかなマイスター協会