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番外編 ノルウェー Aqua Nor 2023 訪問記

おさかなマイスターの養殖講座(番外編 2)

コロナ明け初の海外展示会です。 このAqua Norは2年に1回、ノルウェー中部の町トロンヘイムにて行われる、世界最大の水産展示会です。 世界の水産トレンドを把握し、今後日本の水産業界に導入していくべく、現地展示会に訪問してきました。

ろ過設備編

ノルウェーでは古くからフィヨルドの地形を生かした海面生簀でのサーモン養殖が盛んです。現在もそれは変わりませんが、日本と同様陸上養殖への取り組みも益々増えています。 飼育水をきれいにするための工程として重要なのが物理ろ過、生物ろ過です。それに関連する展示をいくつか紹介します。

ドラムフィルター

小規模の飼育設備で、皆さんはどうやってゴミを取っていますか? ウールマットを毎日交換している、バッグフィルターを毎日洗っている、カートリッジフィルターを使用している、どれも人の手が掛かりますね。 大規模養殖場になると、ゴミの除去→フィルター洗浄を自動で行える装置を用います。

代表的なものはドラムフィルターですね。 飼育水はドラム内部から外部に出る際に、汚れがフィルターで補足されます。汚れが詰まってくると、内部の水位が上がってきますので、それを検知してドラムが回転、汚れた部分のゴミを洗い流します。一方できれいなフィルターが再度水中に入りますので、再びゴミがろ過されます。 日本でも導入実績がありますので、気になる方はお問い合わせください。

ドラムフィルター/ディスクフィルター ドラムフィルター/ディスクフィルター

ディスクフィルター

ドラムフィルターの派生として、ディスクフィルターというものもありました。 内側に入った飼育水が、ディスク側面のフィルターを通過して外部に出ていきます。 このディスクも回転しますので、考え方はドラムフィルターと同じですね。 同じ機械容積で、ろ過面積は数十%アップするそうですよ。

ドラムフィルター/ディスクフィルター ドラムフィルター/ディスクフィルター

カートリッジフィルター

メンブレンのフィルターではなく、金属製のカートリッジです。 カートリッジ内に付着した汚れを、機械的にスクレーパーで落としていきます。 汚れは底に溜まりますので、電磁弁で定期的に排出します。 材質はステンレスなので、海水飼育で使用できるかは懸念点ですが、沈殿槽とフィルターを組み合わせたようなシステムは面白いですね。

カートリッジフィルター カートリッジフィルター

プロテインスキマー

プロテインスキマーは、フィルターでは取り切れない細かな汚れを泡の力を用いて除去する装置ですね。 展示会場では人の背丈を余裕で超える高さのものばかりでしたが、これでも各社最小機種だそうです。1時間に何十トンという水を処理しなければなりませんので、納得ですね。 排出した泡の自動洗浄機能が標準装備でした。センサーでの機械制御等も見られましたが、構造はシンプルなものが一番ですね。

プロテインスキマー プロテインスキマー プロテインスキマー

生物ろ材

生物ろ過材の最低限の必要条件は表面積が大きいことです。バクテリアの付着面積を多くとるのが重要ですよね。それに加えて必要な条件って何だと思いますか? そう、メンテナンスしやすいことです。 今回展示されていた生物ろ材は流動担体がほとんどでした。巨大な養殖プラント設備では、ろ材を取り出して、洗って、といった作業が大変です。ろ材洗浄しやすい流動担体を用いるのは理にかなっています。 壊れにくくてマイクロプラスチックを排出しない、再生プラスチックを使用する等、環境面にも配慮された商品も見受けられました。

生物ろ材 生物ろ材 生物ろ材 生物ろ材 生物ろ材

水中機械編

大きな海面生簀はもちろん、陸上養殖設備においても、内部の目視点検や魚の状態の確認は日々の管理においてとても重要な作業です。 かつてはダイバーが潜って、なんて時代もありましたが、今はカメラが主流です。 また内部を見るだけでなく、人の代わりに作業をしてくれるロボット技術も進歩しています。 水中機械編では、それらに関連する展示を紹介していきます。

水中ドローン

日本でも水中ドローンは盛んになりつつありますが、ノルウェーでは以前から生簀管理やプラントのタンク内検査等の用途で使用されてきました。 今回も世界各地から水中ドローンの展示がありました。日本でもお馴染みのChasingやBlueROVなども見られましたね。

水中ドローン 水中ドローン 水中ドローン

Deep Trekker 新製品「Photon」

マツイが日本代理店をしているカナダのDeep Trekker社も新製品「Photon」の水中展示をしていました。私も動かしてみましたが、操作は従来機器と同じまま、より水中制御がしやすくなった印象でした。10月に発売です。お楽しみに!

水中カメラ

生簀内の様子を見るのは、固定式のカメラが増えつつあります。 ただ見るだけではなく、複数のカメラと計測器を備えたAiカメラです。 商品によって細かい仕様は異なりますが、給餌量と魚群の体長を測定し、適切な給餌量を反映させていくといったものが多いようです。 サケシラミ(付着生物)の状況をチェックする機能なども見受けられました。陸上養殖では馴染みがありませんが、海面でのサーモン養殖において付着生物の除去は大きな課題です。

水中掃除機

陸上養殖の設備が大きくなると、掃除だけでも大変な手間がかかります。 マツイもイスラエルのDolphin社の水中掃除機を販売していますが、さらに大きな掃除機が展示されていました。 大きくなる分、手で持ち上げるのは難しそうですが、一度に広い面積を掃除できそうです。

網洗浄機

海面養殖において、網に海藻や生物が付着し、網が閉塞していくと内部の流れが悪くなります。定期的な洗浄が必要ですが、ノルウェーの海面養殖で使用される生簀は直径50m、100mと、とてつもなく巨大です。日本ではマグロ養殖くらいでしか使われない大きさですね。

網のロボット掃除機

網をブラシで洗浄していく機械は以前からありましたが、陸上養殖と同様、網のロボット掃除機も登場しています。カメラを内蔵しており自動でルートを決めて掃除してくれるそうです。実際に動いているところを見てみたいですね。

水槽周辺機器編

流行り廃れはどの業界でもあります。 以前はよく見かけたが、最近見ないなぁという商品。一方で昔から変わらず使用され続ける商品。 今回の展示会でもその一端が見られました。

フィッシュカウンター

ノルウェーのフィッシュカウンター、Aqua Scan社。 マツイでも古くから扱いがありますが、昔から変わらない商品がそこにありました。 他社のブースでも展示されているのを複数回見かけました。普遍的で良い商品であることがよく分かります。 光を当てて影の面積で尾数を計測するシステムです。魚種に関係なく使えます。

LED照明

6年前のAqua Norでは緑色のLED照明をたくさん見かけたのですが、今回はLED展示自体が少なくなっている印象でした。 とある会社でお話を聴くと、 「緑色の照明は、魚の食欲を刺激するが、人の健康には良くないという調査結果もある。 働き手のことを考えると、常に緑色を照らす訳にはいかない。」 とのことでした。 人も魚も健康第一です。勉強になりました。

フィッシュポンプ

フィッシュポンプは多くのメーカーが展示を出していました。 4inch~12inchまで、幅広い大きさが展開されています。

松阪製作所 フィッシュポンプ「ピンピンZ」

日本の松阪製作所さんも、フィッシュポンプ「ピンピンZ」を展示を出されていました。 マツイでも昔から扱っている、信頼できる商品です。

さて、Aqua Nor訪問記はいかがでしたでしょうか。 全体で500を超える企業・団体が展示されている中で、ご紹介できたものは僅かですが、世界の最先端を覗き見られたでしょうか。

マツイではこういった最新情報も随時仕入れつつ、お客様に最適な設備をご提案していきたいと考えています。「こんな商品ないか?」「こんなこと出来ないか?」といったお問い合わせもお待ちしております。

執筆者

芝原 英行

東京海洋大学院卒。学生時代はウナギの完全養殖の研究に従事。
(株)マツイ入社後、2年目におさかなマイスターを取得。称号の重圧に日々プレッシャーを感じている。

カキ、サバ、ウナギ、マグロ、チョウザメ等、様々な魚介類の養殖設備・実験水槽等に携わり、趣味はダイビング・アクアリウムと魚漬けの日々を送っている。

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*引用:日本おさかなマイスター協会Webサイト

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