水槽の素材について
おさかなマイスターの養殖講座(第3回)養殖における必須設備です。水槽がないと魚が飼えません。どんな生き物を飼いたいか、どんな飼育方法を取りたいか、適切な水槽は目的に応じて種類が異なります。まずはどんな水槽があるのか、水槽の素材別に各種ご紹介します。
目次
水槽の素材
ガラス水槽

アクアリウム 実験水槽 養殖・栽培 漁業
- 透明度が高い
- 傷がつきにくい
- 経年劣化しにくい
- 割れやすい
- 加工しにくい
- 重い
メリット
観賞魚メーカーの製造するガラス製の水槽。
透明度が高く、砂利などで傷がつきにくいのが特徴です。
経年による劣化も少なく、長期間美しい状態を保てます。
デメリット
衝撃に弱く、割れやすい特徴があります。
基本的に決まった規格で製造されており、後から成型する等の加工には向きません。
60cmの規格水槽で約10kgと、重たい傾向にあります。
使用例
家庭における観賞魚水槽、水族館の企画展示、研究機関の実験水槽等で用いられます。
アクリル水槽

アクアリウム 実験水槽 養殖・栽培 漁業
- 衝撃に強い
- 加工しやすい
- 軽い
- 傷つきやすい
- 経年劣化しやすい
- UV劣化しやすい
メリット
衝撃に強く、加工しやすい点が特徴です。
ガラスよりも軽量で、曲げや穴開け加工も行いやすい素材です。
デメリット
素材自体が柔らかく、砂利などによって傷がつきやすい特徴があります。 経年やUVによる劣化で黄ばみやくすみが生じやすいため、直射日光を避ける等置き場所に注意が必要です。
使用例
家庭における観賞魚水槽、水族館の企画展示、研究機関の実験水槽等で用いられます。
成型樹脂タンク(ポリエチレン/PE)

アクアリウム 実験水槽 養殖・栽培 漁業
- 軽量
- 形状が豊富
- 耐候性が高い
- 傷つきやすい
- 接着・印刷しにくい
メリット
比重が軽く、容量に対して軽量です。
成型しやすく、様々な形状のタンクがあります。
他の樹脂に比べれば耐候性が高く、屋外での使用実績も多数あります。
デメリット
素材自体が柔らかく、傷がつきやすい特徴があります。
耐薬品性が高いですが、一方で接着や印刷には不向きです。
使用例
漁港での漁獲物の収容、活魚水槽、貯水タンク等で用いられます。
成型樹脂タンク(ポリプロピレン/PP)

アクアリウム 実験水槽 養殖・栽培 漁業
- 耐薬品性が高い
- 強度が強い
- 燃やせるゴミ
- UV劣化しやすい
- 冷温で脆くなる
- 接着・印刷しにくい
メリット
比重が軽く、容量に対して軽量です。
素材として安価で耐薬品性に優れ、PEと比べて強度に優れます。
燃やしても有毒ガスを発生させず、リサイクルしやすい素材です。
デメリット
耐候性が低く、直射日光によって劣化し、低温で脆くなりやすい素材です。
耐薬品性が高いですが、一方で接着や印刷には不向きです。
使用例
漁港での漁獲物の収容、活魚水槽、貯水タンク等で用いられます。
樹脂タンク(ポリカーボネート/PC)

アクアリウム 実験水槽 養殖・栽培 漁業
- 透明度が高い
- 耐寒性が高い
- 耐熱性が高い
- UV劣化しやすい
- 透明度が落ちやすい
メリット
強度が高く、透明度に優れています。
耐寒性(脆化温度:-130℃)、耐熱性(耐変形温度:125℃)に優れ広範囲で使用可能です。
デメリット
耐候性が低く、直射日光によって劣化しやすい素材です。
劣化により透明度が落ち、黄ばみやくすみが見られるようになります。
形状は丸形のみです。
使用例
アルテミア、ワムシなど餌料生物の孵化管理、プランクトンの培養水槽、稚魚の飼育水槽等で用いられます。
FRP水槽

アクアリウム 実験水槽 養殖・栽培 漁業
- 耐候性が高い
- 加工しやすい
- 形状が自由
- 受注生産品
- 重量が重い
- 輸送コストが高い
メリット
他の樹脂製タンクに比べ屋外での耐候性に優れています。
また、色・仕切り・配管・断熱等の加工を行いやすく、用途に応じた仕様に製作出来ます。
形状も自由に製作できるため、角形・丸形・その他特殊な形状にも対応できます。
デメリット
型を基にひとつずつ手作業で製作するため、基本的に在庫はなく、受注生産品です。
重量は重めで、輸送コストも大きくなります。
使用例
養殖場での飼育水槽、漁港での活魚水槽、水族館の展示水槽等、幅広い飼育現場で用いられます。
組立式シート水槽

アクアリウム 実験水槽 養殖・栽培 漁業
- 現場で組立可
- 輸送コストが安い
- 刃物や棘に弱い
- UV劣化しやすい
メリット
ターポリン製のシートを水槽として使用します。
FRP製の型枠、またはPVC製パイプを枠とし、現場で組み立てます。
水槽の容量に対して輸送費が大幅に削減でき、また解体・移動して再度の組立も可能です。
デメリット
鋭利な刃物や魚の棘等に弱く、シートに穴が開いてしまいます。
飼育する生物やシートの取り扱いには注意が必要です。
また屋外での使用により、シートは劣化しやすくなります。
使用例
養殖場での飼育水槽、水族館のバックヤード水槽等、大容量が必要で、運び入れが大変な場所で多く用いられます。
PP組立水槽(ポリプロピレン)

アクアリウム 実験水槽 養殖・栽培 漁業
- 大容量水槽でコストが安い
- 対応業者が少ない
- 現場作業が多い
メリット
PP製の一枚板を切り貼りし、水槽の形状を作ります。
水槽容量に対してのコストが圧倒的に安く、大量に設置する養殖場等に向いています。
デメリット
PPの溶着技術が難しく、対応できる業者は多くありません。
全て現場での組み立てになるため、少数の水槽では逆にコスト高になってしまいます。
使用例
養殖場での飼育水槽、海藻培養水槽等で用いられます。
コンクリート水槽

アクアリウム 実験水槽 養殖・栽培 漁業
- 大容量水槽でコストが安い
- 設置後の改造が難しい
- 海水による錆に弱い
メリット
建築物として大容量の水槽を作る際、最も安価なコストで製造可能です。
形状は自由に製造可能です。
デメリット
一度作ると加工・改造は容易ではありません。
海水を使用する場合は内部の鉄筋が錆びて爆裂する可能性が高く、メンテナンスが難しい水槽です。
使用例
養殖場での飼育水槽、稚魚の飼育水槽、海藻培養水槽等で用いられます。
※弊社では製作できませんが、表面のFRPライニング加工は承ります。
執筆者

芝原 英行
東京海洋大学院卒。学生時代はウナギの完全養殖の研究に従事。
(株)マツイ入社後、2年目におさかなマイスターを取得。称号の重圧に日々プレッシャーを感じている。
カキ、サバ、ウナギ、マグロ、チョウザメ等、様々な魚介類の養殖設備・実験水槽等に携わり、趣味はダイビング・アクアリウムと魚漬けの日々を送っている。
おさかなマイスターの養殖講座 コンテンツ一覧
第1回養殖業を始めるには?ビジネスの視点から徹底ガイド!
第2回陸上養殖業の基本!方式・設備・コストを解説
第3回水槽の素材について
第4回水槽の選定について
番外編水産養殖関連 設備 納入事例のご紹介
第5回きれいな水を維持しよう!物理ろ過の基本
番外編 2番外編 ノルウェー Aqua Nor 2023 訪問記
第6回見えないところもきれいにしよう!生物ろ過の基本
第7回生物ろ過で水質を適切に管理しよう!
番外編 3番外編 東京 シーフードショー 2024出展記録
第8回生物ろ材の特長を把握して選定しよう!
番外編4番外編 「その牡蠣の水槽、本当に殺菌できていますか?」(前編)
番外編5番外編 「その牡蠣の水槽、本当に殺菌できていますか?」(中編)
おさかなマイスターって?
さかなをおいしく、賢く食べるために、さかなの魅力を伝えるために魚介類の旬、栄養、産地、漁法、調理、取扱方法などを学びさかなの魅力や素晴らしさを伝える「さかなの伝道師」です*。
弊社(株式会社マツイ)には「おさかなマイスター」の有資格者が在籍しております。当ページでは有資格者の監修の元、養殖にまつわる専門知識をお伝えしていきます。
*引用:日本おさかなマイスター協会