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養殖魚の餌にはどんな種類がある?
生餌から各配合飼料まで、用語を解説

おさかなマイスターの養殖講座(第9回)

魚を養殖するうえで、欠かすことのできないものが「餌」です。
養殖魚の餌と聞くと、皆さんはどんなものを思い浮かべるでしょうか?
イワシやサバなどの魚をそのまま与えるもの、粉末を練り合わせたもの、粒状に加工したものなど、実は様々な種類があります。
最近では魚の成長を促すだけでなく、身の色や味、健康状態にまで配慮した飼料も開発されています。
一方で、養殖用の餌には「EP」「DP」「MP」などの専門用語が多く、何がどう違うのか分かりにくいところもあります。
そこで今回は、現在の日本で使用されている代表的な養殖用飼料について、種類や特徴を紹介していきます。

養殖水槽と手のひらに載せたペレット飼料

1.養殖魚にどんな餌を与えている?

養殖魚の餌は、大きく分けて「生餌」と「配合飼料」があります。

① 生餌(なまえさ)

イワシ、サバ、アジなどの魚を使用する餌です。
昔から海面養殖などで広く使用されています。
魚の食いつきが良い一方で、原料となる魚の漁獲状況によって価格や供給量が変動するほか、冷蔵・冷凍保管設備が必要になります。
また、食べ残しや細かな破片が水中に拡散すると、水質悪化の原因にもなります。

魚をミンチ・スライスした生餌

② 配合飼料

魚粉や植物性タンパク質、魚油、ビタミン、ミネラルなどを組み合わせて作られた人工的な飼料です。
魚種や成長段階に応じて栄養成分を調整でき、品質が比較的安定していることが特徴です。
現在ではブリやマダイ、サーモン、ヒラメ、ウナギなど、様々な魚種に対応した製品が販売されています。
ただし、一口に配合飼料といっても、その形状や製造方法によっていくつかの種類があります。

生餌・配合原料からMP・SMP・EP・DPを作る流れ

2.配合飼料の様々な種類

養殖用の飼料を調べていると、EP、DP、MPという言葉をよく目にします。
これらは飼料の製造方法や性状を示す名称です。

① MP(モイストペレット)

生餌を細断したものに、粉末状の配合飼料などを混ぜ合わせて作る、比較的水分の多い餌です。
養殖現場では「マッシュ」と呼ばれる粉末飼料やフィードオイル、ビタミンなどを混合して使用することがあります。
生餌に近い食いつきの良さが期待でき、現場で配合割合を調整できることが特徴です。
一方で、餌を調製するための設備や作業が必要で、原料の保管・衛生管理にも注意が必要です。

MP(モイストペレット)

② SMP(シングルモイストペレット)

魚粉などを主原料とした粉末配合飼料に、水や魚油を加えて練り合わせ、粒状に成形した半生タイプの餌です。
MPとの大きな違いは、生餌を使用しないことです。
生餌を使用しないため、栄養成分を調整しやすく、比較的安定した品質の餌を作ることができます。
一方で、水分を多く含むため、乾燥飼料に比べて保存性が低く、冷凍保管などの適切な管理が必要になります。

SMP(シングルモイストペレット)

③ DP(ドライペレット)

ドライペレットは、原料を粉砕・混合した後、ペレットマシンで圧縮して粒状に成形した乾燥飼料です。
比較的密度が高く、水中では沈むタイプが一般的です。
EPに比べると製造工程が比較的シンプルですが、大きな粒や多量の油脂を含む飼料の製造には制約があります。
なお、メーカーによっては「HP(ハードペレット)」などの名称で紹介されることもあります。

DP(ドライペレット)

④ EP(エクストルーダーペレット)

原料をエクストルーダーという機械で高温・高圧処理しながら成形した飼料です。
原料に含まれるデンプンが消化されやすい状態に変化し、粒が水中で崩れにくくなります。
また、DPに比べて多量の油脂を含ませやすく、浮くタイプや沈むタイプなど、物性を調整しやすい特徴があります。
現在では多くの魚種に利用されている代表的な配合飼料の一つです。
ちなみに、EPもDPもどちらも「ペレット」の一種です。
ペレットとは粒状に成形された飼料の総称であり、EPとDPはその製造方法が異なるということですね。

EP(エクストルーダーペレット)

⑤ Soft-EP(ソフトEP)

EPの一種ですが、通常の硬いペレットと異なり、柔らかな食感を持たせた飼料です。
魚の食いつきや給餌時の作業性などを考慮して開発された飼料です。

Soft-EP(ソフトEP)

⑥ 練り餌(ウナギ用など)

粉末状の配合飼料(マッシュ)に水や油を加えて練り合わせた、ペースト状の餌です。
特にウナギ養殖で広く使用されており、給餌台に載せて与えます。柔らかくまとまりがあり、ウナギが食べやすい形状になっています。

ウナギ用などの練り餌

⑦ 板状・シート状飼料(アワビ・ウニ用など)

薄い板状に成形された特殊な配合飼料です。
アワビやウニなど、海藻や岩の表面に付着した餌を削り取るように食べる生物に適しています。
水中でも崩れにくく、底面や給餌板などに設置して使用できる製品があります。

板状・シート状飼料

⑧ 顆粒(かりゅう)・クランブル(稚魚用など)

仔魚(しぎょ)や稚魚向けの小さな粒状飼料です。
顆粒は原料を微小な粒に加工したもの、クランブルはペレットを細かく砕いたものです。
魚の口の大きさや成長段階に合わせて、粒のサイズを変えて使用します。

稚魚用の顆粒・クランブル

3.浮く餌と沈む餌、どちらが良い?

餌の選定では、「浮上性」と「沈降性」も重要になります。
水面に浮く餌は、魚が食べている様子や食べ残しを確認しやすいという特徴があります。
一方、沈む餌は中層や底層で餌を食べる魚に適しています。
また、ゆっくり沈むように調整された餌もあります。
どちらが優れているというわけではなく、魚種の摂餌行動や飼育環境に合わせて選ぶことが重要です。
特に陸上養殖では、水槽内の水流によって餌が魚に食べられる前に排出されてしまうこともあります。
餌の浮き沈みは、魚の食べやすさだけでなく、食べ残しや水質管理にも関係しているのです。

水面に浮く餌と水中に沈む餌の比較

4.餌に混ぜる添加原料や補助飼料とは?

養殖の現場では、配合飼料に様々な原料を追加することがあります。
栄養補給や食いつきの改善、魚の肉質や体色の調整などが目的です。

① フィードオイル(飼料用油脂)

フィードオイルは、餌に混ぜて使用する油脂です。
魚油などを原料とした製品があり、餌のエネルギー量を高めたり、EPAやDHAなどの脂肪酸を補ったりするために利用されます。
ただし、油脂を多く加えればよいというわけではありません。魚種や成長段階に応じた適切な添加量が重要です。

飼料にオイルを添加するイメージ

② 海藻粉末飼料

昆布やワカメ、アオサなどの海藻を乾燥させ、粉末状に加工した飼料原料です。
海藻に含まれるミネラルや多糖類などを利用し、栄養補給や肉質改善などを目的として、魚類の配合飼料に添加されることがあります。
また、海藻粉末はナマコの養殖でも餌として利用されています。
ナマコは海底の砂泥に含まれる有機物や微細藻類などを取り込んで栄養を得る生物です。
そのため、ナマコの飼育では海藻粉末とその他の原料を組み合わせた配合飼料などが利用されています。
魚のように粒状の餌を活発に食べるわけではないため、餌の粒子の大きさや沈み方、海底への広がり方なども重要になります。
同じ養殖でも、育てる生物によって餌の与え方は大きく変わるのですね。

海藻粉末飼料

③ その他の添加原料

このほかにも、ビタミンやミネラル、アミノ酸、乳酸菌などの有用微生物、色揚げを目的としたアスタキサンチンなど、様々な原料が利用されています。
地域特産の柑橘類を混ぜて、風味や脂を改善する働きかけも各地で見られます。「オリーブハマチ」や「すだちぶり」などですね。
なお、これらはすべてが法律上の「飼料添加物」に分類されるわけではなく、一般の飼料原料や混合飼料などに区分されるものもあります。
用途や魚種に応じて適切な製品を選ぶことが重要です。

5.仔魚には生きた餌も必要!

魚が生まれたばかりの時期には、「生物餌料」と呼ばれる生きた餌が使用されることもあります。
代表的なものが、ワムシやアルテミアです。
これらは小さな動物プランクトンで、多くの海産魚の種苗生産に利用されています。
生まれたばかりの仔魚は、人工飼料を十分に食べられないことがあるため、ワムシなどを培養して与え、成長に合わせてアルテミアや微粒子の配合飼料に切り替えていきます。
また、ワムシやアルテミアにDHAやEPAなどの栄養素を取り込ませる「栄養強化」という技術も使われています。
種苗生産の段階から、餌には様々な工夫がされているのです。

ワムシとアルテミア、および栄養強化のイメージ

6.餌の選び方は養殖コストや水質管理にも関係する?

ここまで様々な餌をご紹介しましたが、実際にはどのような基準で餌を選べばよいのでしょうか?

選定ポイント 確認する内容
① 魚種・食性 肉食魚、雑食魚など、魚に適した栄養成分か
② 成長段階 仔魚・稚魚・成魚に合った粒の大きさや形状か
③ 摂餌行動 水面で食べるのか、水中で食べるのか。浮上性・沈降性は適切か
④ 経済性・水質 飼料価格や成長効率、食べ残しによる水質への影響はどうか

餌を選ぶ際には、主に次のポイントが重要になります。
特に養殖業では「餌のコスト」も重要です。
単価が安い餌でも、魚を成長させるために大量の給餌が必要であれば、結果的にコストが高くなることがあります。また、食べ残しや魚の排泄物は水質悪化の原因となり、特に閉鎖循環式養殖(RAS)では、ろ過設備への負担にも関係します。
「魚が食べやすい」「効率よく成長する」「水を汚しにくい」
これらのバランスを考えて餌を選ぶことが、養殖の効率化につながるのです。

まとめ

今回は、現在日本で使用されている養殖用の餌について、その種類や特徴をご紹介しました。
一口に養殖用飼料といっても、本当に様々な種類があり、魚種や成長段階に合わせて使い分けられています。
近年では、養殖用飼料の原料価格が大幅に高騰しており、魚粉の使用量を減らした飼料や、昆虫などを利用した新しい飼料の研究開発も進んでいます。
マツイでも各種メーカーの飼料を取り扱っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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さかなをおいしく、賢く食べるために、さかなの魅力を伝えるために魚介類の旬、栄養、産地、漁法、調理、取扱方法などを学びさかなの魅力や素晴らしさを伝える「さかなの伝道師」です*。

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*引用:日本おさかなマイスター協会

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